冬の時計
山人

白と黒の、うっとりと時の踊り場で寛いでいるかのような、冬
雪は未だ、ここに居てもいいのかどうなのか、
わからないでいるように見えたりする、初冬
暗い雪の夜道を歩いてみれば、小首をかしげた四つ足獣の足跡一匹
獣毛から匂い立つ冬へのいざないを想像する

三つの季節の激情を回顧すれば、
そこにあるのは三つ巴に絡みついた汗と、
言いようのない不条理な刹那の数々
そのすべてが不可思議な臓物に消化されて天空へと舞い上がり、
こうして、
これ以上白くならないというほどの純度の白色を堆積させてくれた

冬の前に死んでしまった三つの季節の私が、
かりかりと凍った夜明け前を歩いている

生まれ変わることは永劫無い、が、しかし
たたかって負けるのか、たたかう前に負け散ってゆくのか
どちらが良いなどと言いようもない
けれど、冬の卵が孵り、冬の時計は動き始めた



自由詩 冬の時計 Copyright 山人 2023-12-19 07:19:36
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