師走雑感
そらの珊瑚

寒さと賑やかさが混然とした師走だった
子どもたちは家の手伝いを請け負う
障子に貼られた紙をビリビリに破ることほど
心躍るものはなかった
 平素子どもたちは無自覚に平凡で暇だったから
洗われて骨組みになった障子から見る庭は
あっけらかんと冬の始まりだった
畳は大人たちによって庭に運ばれ
現れた板の間に敷かれた新聞紙は
一年間の仕事を無事終えた
仏壇から降ろされる位牌や知らない人の写真立て、
金属製の花やらの埃を拭く
まるで空き家になった仏壇という小さな家を覗けば
その仄暗い奥が何処にも繋がっていないことに安堵した

仏壇に供えてあった
黄色やピンクに彩色された
花形の砂糖菓子は
子どもたちのおやつになった
庭に出てそれをかじる
砂糖だ!
砂糖まるかじりだ!
歯を溶かしそうな甘味に笑い合う
無自覚に平凡な私たちは
ぼろぼろと砂糖のかけらを落としながら
さらさらと時間のかけらを落としながら


自由詩 師走雑感 Copyright そらの珊瑚 2023-12-16 13:42:44
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