夏の幻
ミナト 螢

水平線の向こうに
会いたい人がいる

思い出の中で
着替えをしながら

朝には朝の輪郭で
見つめ合ったりした

鏡のような世界に
生まれてしまったから
映るものは全部
愛しておきたい

夜には夜の爪痕で
空を剥がして
食べに行くの

砂浜に落ちてる貝殻で
君と話せたら
電話なんていらない

声が聞きたくて
何度も呼んだ名前を
海はいつしか覚えて
波の間を泳いでいく

もう会えないと分かってても
君のことを考えて
痛くなりたいから

貝殻で切った
薬指の赤い血を
海で洗い流す時

君と僕を繋ぐ
運命みたいに見えた


自由詩 夏の幻 Copyright ミナト 螢 2023-12-12 21:09:26
notebook Home 戻る