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医ヰ嶋蠱毒

黑く鎖ざされた新月の夜
叢を吹き曝す風の一陣

太古の黄泉を此岸へと繋ぐ
それは鍵穴であるのか

外套を羽織る私を睥睨し
墳墓は聳える

辺り一面の闇は射干玉
糸を引いて粘着くように

追憶を謡う閻魔蟋蟀

私の意識は
青褪めた電光を放ちつつ
痩せた軀から這い出して

鴉揚羽を追い掛ける
其処の底へと

しじまに屹立した馬の塑像を
黙祷により示された
僅かな道標のひとつとして
伊邪那美の腕に抱かれながら
埴輪の隊列が導く先をゆく

黑く鎖ざされた新月の夜
叢を吹き曝す風の一陣

太古の黄泉を此岸へと繋ぐ
それは鍵穴であるのか

亡き王の玉座も朽ちゆく齢
その先の
あの丘を成す土塊の下で
一つの髑髏
眼窩の虚が煌りはじめる


自由詩 ancient Copyright 医ヰ嶋蠱毒 2023-12-08 18:44:06
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