石の花
レタス

今夜は独りウオッカをあおっている
他に客はいない
棚に飾られた真鍮の潜水ヘルメットを眺めながら
海の歌をくちずさむ

ララル ラララルララ~ ラララ…

何時だったか
黒いドレスに赤いハイヒールの女がスローなダンスを踊っていた
冷えた肩と凍える指先が人恋しくなる
Come Here…

マスターは無言でグラスを磨き
カウンターには一輪挿しの紅い薔薇
時計の針だけが意味もなく進んでいる

酔えば酔うほどに
深く 深く 漆黒の闇に沈んで
深海魚がゆらゆらと眼の前を通り過ぎてゆくだけだ

これで良い これで良い
今夜はあまりにも静かで
カウンターの薔薇も石化している
そろそろ眠ろう
何が起こるかわからない明日のために


自由詩 石の花 Copyright レタス 2023-12-06 00:15:36
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