ritual
医ヰ嶋蠱毒
攣する犬の眼球を聳える鉄塔の天辺に据え
脳殻を浸す白濁した満月の体液を攪拌し撒布せよ
砂漠の痘痕に播種された柔かい狂気の核が芽吹く頃
蟒蛇のかたちで生き餌を喰らい、嬰児の眸へ灌ぐ毒の苦味が
放埓な裸體の雛型に似ている
「あくまでも鋭利に」
匣を披く蒼褪めた膚の少女が纏う黒いエナメルの外套は
防腐処理を施された屍の唇へ静かに接吻する深夜のように美しい
墓碑の裏に潜み血を啜る恐ろしい獣
狩人が刎ねた彼の悍ましい頭蓋を祭壇に掲げ神の名を呼ぶ
「メネ、メネ、テケル、ウ、パルシン」
極彩色の淋巴管へ接続する老い曝えた錬金術師の視る悪夢
十三番目の人造人間が大理石の卓に着く
フラスコの裡の繁殖したオルギア、殺戮の若木は裁定を受け
東亞の電気都市に咲く蝙蝠傘の大群
ネオンを帯びた酸性雨に濡れながら
少女は義眼を嵌め死んだ飼い猫を火葬しにゆく
「祈りは絶望のミメシスとして私を侵す」
黄昏の運河を眺望する稀薄な意識の残滓は遂に深淵へ潜行する
軈てネビュラの遥かより来る暗闇が水飴のように盆を満たして鈍く耀き
少女はカンヴァスに描かれた自らの肖像の片腕を贄として
永い睡りに沈んだ儘の旧き者を讃える秘儀を
破瓜の苦痛を伴いながら幼い子宮へ秘匿された万象を
一篇の詩として暴き出すから
「もうたすからない」