本田憲嵩

たくさんの秘密を分け合おうよ。ときには魔女のように下卑た笑みをいっぱいに浮かべながら、沸きたつ好奇心に駆られて、たくさんの楽しいことを。
たとえば小学校の男子用トイレ。その鍵がかけられた個室のドアー。学校のトイレで大便するとどういうわけだか笑い者されるという謎の不文律。にも拘わらず誰かがいま大便をしているという目の前の事実。誰もいないもうひとつの隣の個室に友達ふたりでそろりと忍び足で入って、まずは僕の方から古い和式便器の上に立って、小さなタンクの縁に両手をかけ、その狭い上へと一気によじ登る。そうして、そのもうひとつの個室の仕切り壁の上からキリンのように首をにゅっとせり出して、こっそりと下の方を覗きこんでみる――。
そうして、ほぼ真上から覗きこんだ校長先生の禿げ頭はそれはそれは素晴らしい卵型をしていて、ヨード卵光、そのつるりとした光沢が今でもこの目に強く焼き付いている。そういえば卵はその栄養価がとても高い。きっと秘密や思い出や笑いの栄養価だって。ただ唯一の違いは、昨今卵のコレステロールはあまり病気にはなりにくいということらしいが、僕が接種したとても光る卵のコレステロールは、その人の精神に悪影響を及ぼす可能性が非常に高い、ということだ。


珍しくだれかが大便をしている。



自由詩Copyright 本田憲嵩 2023-12-01 00:30:34
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