キューピッドとプシュケ ~Aretha Franklinに
カワグチタケシ

大丈夫?
大丈夫
心配?
心配ない
私が私に尋ね
私が私に答える
それは内なる神との対話

私たちが見ているものは
私たちが見ていると信じるものは
本当に私たちの目が見ているのか

かつて商店だった建築は植物に覆われている
老世帯が退去した公営住宅が荒廃していく
またたくまに蔓草が繁茂して
水仙の花だけが咲き
窓ガラスの破片が散乱する

私は裕福な家庭に生まれた
父はよく通る声で話した
客間で幼い私にブギウギを歌わせた
母は私を守れなかったことを後悔した
子供部屋の二段ベッドで
幼い私は天使を身籠った

始まったのは現在ではなく
既に過去のある時点
読まれることのなかった手紙が
靴底に貼り付いている

私は旗を背負った
私には理由がある
理由があって目的がある
私は私の意志で旗を背負った

私は涙
涙は柱
私を支える

我々はときに速度と時間を混同してしまう

なのに
かくあれかしと
思うより先に
声が私を導いた

グリーン・ガートサイドが歌う
毎晩眠りにつく前に
祈りを捧げるの
アレサ・フランクリンのように

夏の庭で
夜の庭で
歌うような声で歌う

毎晩眠りにつく前に
祈りを捧げるの
アレサ・フランクリンのように

その祈りはマニュフェストのように響いた


contains sample from G. Gartside

 


自由詩 キューピッドとプシュケ ~Aretha Franklinに Copyright カワグチタケシ 2023-11-29 23:53:09
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