秘めるが花
46U


黒いスニーカーに 赤い爪を隠して
きみの隣で揺られてる 私鉄 日曜午後八時
窓に映る顔が白くて 目ばかりが大きくて
きみの隣で疲れを見せてる こんな自分がいや

さっき呑んだ梅酒
リトアニアのリキュール
ハーブの効いたサカナ
レモン味のじゃがいも
妙な話ですが 只今現在きみと
胃の中身が同じってこと
わけもなくうれしいのです

会話は途切れたままでも いたたまれないってこともなく
やがてきみは降りていき あたしは深く座りなおす

黒いスニーカーの中 赤い爪があると
きみは知らないままで 家路を辿ってくけど
みるみる顔に血がのぼる 見送った途端 染まりだす
きみが来るって知ってたら むしろ赤にはしなかった

さっき交わしたトリビア
深い声のジョーク
メールの後日談や
二年後の春の約束
妙な話ですが 只今現在「片恋」。
真紅のペディキュア同様 秘めるが花 と ひとりごち
わけもなく靴紐を結びなおすのです 私鉄 日曜宵の口
 


自由詩 秘めるが花 Copyright 46U 2023-11-13 22:06:33
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