腰痛の懐妊とそれをすこしでも緩和するための詩
菊西 夕座

下半と上半をつなぎとめているのは腰の骨
(やれやれ腰がついに口をききはじめた)
つまりは天と地の神聖なむすび目も腰にある
(口をひらけば不自然な違和感もおきてくる)
神がつかわすロープは言葉となって腰にまかれ
(いよいよ大げさな発想が痛みとなってふくらみ)
人間をはじめて精神的な存在へと目ざめさせた
(まるで背中の懐妊といわんばかりの陣痛にかわる)

これからの詩は頭でなく腰がうたうべきだろう
(なんたる背徳の的はずれなつけあがりだろう)
なんとなれば上[かみ]とのむすび目は腰にあるのだから
(腰痛の原因がわかっただけでも気はやすまるが)
すなわちそよ風は糸となって腰にまきついたあと
(これ以上は空気であれ腰に負担をかけないでくれ)
花へとながれて精神を美へとむすびつけてくれる
(これ以上はなんであれ腰にむすびつけないでくれ)

たましいは腰から言霊をかえしてこそ真実にいたる
(まさか言葉をつたって悪霊が腰にくだるとは)
生命もまた腰をふってこそ地上に誕生できる
(上[かみ]から下るロープをだれか切ってくれないか)
腰をふってふってひたすらふりまくってうたえよ人間たち
(もはやただの淫乱に堕する腰語こそ呪われている)

きみたち人間が真にめざめるときにこそ腰は前にある
(そうしてパンツを反対にはいてしまう自分をあざ笑え)
へその緒のごとき偽りのロープをなつかしむのはやめろ
(悪魔がいつまでも尻尾をきれない理由がこれか)
いまこそ腰をつきだして全身全霊の稲妻をこそうちはなて
(最後をしめくくるファンファーレがすかしっぺとはな)


自由詩 腰痛の懐妊とそれをすこしでも緩和するための詩 Copyright 菊西 夕座 2023-11-05 22:16:13
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