観覧車ジャック
ただのみきや

太陽に視姦され
草木の血は凝固する

飛来ではなく剥離
季節は肌を散らす
バラのように 蛇のように

鳥のように音が
魚のように光が駆け抜ける
時の流れの底

目には止まって見える
絵具の海は悠々と対流し──

ひとりの女が上がって来る
裸体 白紙としての
死の処女性に生は強く惹きつけられる

見上げれば
ひとみに落ちてくる
世界は せわしなく沸騰し──

ぼくが忘れられた早贄であるように
きみもまた月を孕んだ貝にすぎない

もつれ合い 発火する 
乳房の谷で
かつては蝶で会話した

いまは喉の奥に鏃が埋まったまま
吊るした殺意に梁が軋む日々
八方からとり囲む自分の影

さあ流行りの正義に彩られた唇で
神話のファスナーを下ろしてごらん

風もなければ煙もない?
その石は砕けないただ砕くだけ

沈む舟のようにぼくらの明日は自由
価値観のめまい 

でもその前に今は観覧車に乗ろう
鞄が重すぎる 中は虚無なのに


                 (2023年11月4日)








自由詩 観覧車ジャック Copyright ただのみきや 2023-11-04 11:35:48
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