okaeri.com 11-20
AB(なかほど)

  



「今年の鮎う ちっこおてえ、」
小さい頃から毎年聞かされてきた
親父の秋を告げる声



魚屋の親父だけは
てやんでえ、と言いながら
いまでも娘の帰りを待っている



あれ以来だよ
夢で会うなんて って
見ている側から食べるなよ



あぜ道 道草 帰り道
生まれくるもの帰り道
生まれゆくもの帰り道



夢 やぶれて 帰途
どこからか いしころ一個の うなり声
ずるいよ まだ 帰れない



あの頃のようにこたえてくれないかい
夕焼けのコメットさん
日暮れが近いよ



あれから基地の中や夜の街や内地で働いたり
それでもたぶんみんな
吉じいのくれたキャンディーを忘れてないよ



もうあの日の僕は忘れていいかい
夕焼けのチケットさん
すっかり色も褪せてしまったのだから



ひとつずつでも足してゆければと思うんだ
ほら、夕焼けのカレットさん
まだここんとこにも隙間が




世界の偉い人達が島に来た。
この国の偉い人達は、おおわらわらしい。
島の偉い人達は自慢げで、
でも、愛する僕の家族はいつも通りだった。



 




  
  



自由詩 okaeri.com 11-20 Copyright AB(なかほど) 2023-10-29 15:08:41
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