蒼い話
日々野いずる

真面目度と正気度の高い高い高い話
園庭のブランコか滑り台かで落ちた
前歯が欠ける
紅茶に落ちた月も欠ける
今日を明日を明後日の時間の縁を
つないでいくのが本当に
自分の体なのかと
欠けた前歯が証明してようが
どうして、躰の中の何がいう
まばたきしている間に欠けてたよ
指摘される
透明なひどく透明な
笑顔を見せる
トウモロコシ畑から顔を覗かせる子供たちが
まとわりついて立てる
湖を渡る足の長いラクダの
その背から滑り落ちる客を
慌てて捕まえる船頭が
幻想を占拠する
もう二度と産まれないように
もう二度と産まれないように
息を吸えないから溺れている
紺碧が海で、群青が空なら
それに挟まれた私が蒼でもいいのに

罪がない
罰がない
はじまらない
なにもない
おわらない
なに、なんで、
生きているだけで罪だ
生きていてこそ罰だ
罪状を読み上げる
長々としたひとつひとつに
過ごした時間が溶けている
ソレは私ではなくて
私は躰ではなくて、
いやいやだってが通用しない、
欠けた前歯と月が証明している
こんなことになるなんて
縛られてしまって、どうして

空と海とに挟まれている
どこまでも透明に薄まることができるはずで
蒼にこの世で一番ふさわしくて
蒼に一番になれるはずなのに
何色でもない手を
伸ばす


自由詩 蒼い話 Copyright 日々野いずる 2023-10-28 04:48:02
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