アネモネアネモネ
46U


横断歩道のラインの梯子
とおりゃんせ、がスピーカーからあふれる
さあ渡ろう
白だけを踏んで
くちさびしいからつぶやく
「アネモネ アネモネ アネモネ」

猫みたいにやわらかな足で
白だけを踏むんだ
踊るように行けるでしょう?
「アネモネ アネモネ アネモネ」

白だけ踏んで旅路を行けはしないね
自閉しているコンクリート
ぬかるんで重い嵐のあとのさら地
つまづいたら大怪我しそうな朱い煉瓦の花道や
逃げ水がかかる黒いアスファルト

白いラインを踏むんだ
とおりゃんせが流れたら
踊るように行くためのおまじないだよ
ほら
永い横断歩道の先に
緑薫るあまい酸素の一角
重い荷物をおろして腕いっぱい摘もう
地平いちめんに揺れる
アネモネ アネモネ アネモネ。



自由詩 アネモネアネモネ Copyright 46U 2023-10-24 23:38:11
notebook Home 戻る  過去 未来