雪虫
本田憲嵩

かさかさと地面をすべってゆく、殺伐とした風に、押しだされた、すっかりと茶色くなってしまった落ち葉も、もう動かなくなってしまった蜘蛛の手足も、気まぐれに、かるく爪弾いただけで、いともたやすく砕けてしまう。そんなふうに、いよいよ深まってしまった、とても乾いた晩秋。
しかし、ほぼ同時に、わずか一週間ほどの天寿しか持たない、まるで雪の代理のように、ぼくの掌のうえで、あっという間に死に絶えてしまうもの、きわめてミクロに飛来してきて、いちはやくこの冬の始まりを告知してくるもの、雪虫。そして、そんなふうに、いつの間にかもうすべてが白くなってしまっていた、父の頭髪。朝のニュースでは初雪が大雪山に例年よりも多く降り積もっている、らしい。



自由詩 雪虫 Copyright 本田憲嵩 2023-10-22 00:58:25
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