茶葉たちのチャばなし(お椀なし)
菊西 夕座

―あなたはどんな茶葉だったの?
へバりついっチャってたからアタシ
―どこに?
チャんとおぼえてないんだけどタシカ
―湯呑み?
シャンハイ
―チャンハイ?
はい
―どっち?
チャンハイ
―シャンハイっていわなかった?
言っチャってないと思う
―いっチャってるわよ。
どうして
―のこっ茶ってるもの。
どこに
―「湯呑み」の下。
へバりついチャってるかしら
―チャってるわね
あチャー
―お茶ー。
おヂャー
―お茶を濁したわね?
うまくにごったかしら?
―濁ってはいるけど落ちてはないわね、
アタシたチャって落ち葉にもなれない
―アタシたチャにしないで。あなチャだけだから。
あなチャもおなじ茶場のなかよ
―他茶よ。
だからたチャよ
―たチャはたチャでもそのたチャじゃないのよ。
たチャもたチャももうごっ茶ごチャだよ
―そもそもほんらいは「たち」なのよ。
立ちなんて茶葉はめったにないわ
―たしかに茶柱が立つのはめずらしいけど、あれは茎よ。
だからたいていの茶葉は寝たチャなのよ
―そりゃそうだけどチャんすはあるわ。
茶んすはたしかにあるわね
―茶んすに賭けてみたらどうかしら?
さっきからずっと掛けてはみてるけど
―どんな感じかしら?
ずっと茶番ムードが支配的だわね
―やっぱり茶葉んムードがシャンハイ的かしら?
どうみてもシャンハイ的だわね
―そうなるとそろそろ完敗かしら?
いやむしろ杯が干されて乾杯の兆しね
―ほしたらこんどこそチャんと洗われたいわ。
いつまでも湾にこびりついているのはごめんだし
―ごしごし洗われて死後の世界はきっと、
きっとバレちゃわないようにしなくちゃ
―バれチャったらすっかりおしまいなのよ。
バレちゃも番茶も低級品って意味ではおんなじ
―こんどこそとことん葉テナでいてやるわ。
アタシも葉っ? っていってやるわ
―でもそのまえに聞いてくれるかしら?
だれが
―だれかが。
アタシがまっ先にきいてあげるわよ
―なんて?
あなたはどんな茶葉だったかのむ
―む?
飲んちゃった
(飲ん茶だめよ)
チャっチャったわ
(口をあけてよ)
無茶よ
(あたしどこにいくの?)
シャンハイないよ
(心配ない?)
シャンハイないって
(心配ないって言って!)
シャンハイない。
―(なんか喉にへばりついちゃってる)
それだけは勘弁して。
―(もう一杯のんでだし茶ってちょうだい)
お椀ないかしら
―(湯呑み茶碗ないの?)
お椀ないわ
―(これでお終いなのね?)
おわんないのよ、ごめんね





自由詩 茶葉たちのチャばなし(お椀なし) Copyright 菊西 夕座 2023-10-22 00:43:27
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