道の木々
番田
夜道を歩いていると、今日は、ゴロツキたちはいなかった。ゴロツキというのは、外でメシを食っていたり、ベンチに座っていたり、飲んでいたりする連中のことがそうで、心の中でそう、呼んでいた。通りに立ち止まっていると、ただ、目の前を過ぎていく人たちは、家に帰っていく。酒を飲みたいと思う。どこかに立ち寄ろうとしても、店すらも無い街で。吹かれていた風を感じながら立っていた。人のことは、何も、名前さえも知らない。木々が見えてきた。どこに、今日も行くのだろうと思う。少し道を進むと、ぼやけたような色の倉庫街が見えてくる。中はどうなっているのかと思うが、誰も見ることはできないのだろう。僕はマウスを手に取る。そんな、横を過ぎていくことだけを噛みしめる日々だった。そのようなことを、今日も思った。木々は次の季節の気配をはらんでいるように見える。新しく住み始めた街にも、慣れはじめていた。僕は、今日もパンにピーナッツバターを塗って、食べたのだ。しょっぱいような味がした。青いケースの中に、入っていた。輸入された、アメリカの中で製造された商品だ。製氷機の氷がわざとらしい音を立てて落ちているのが僕はわかる。どうもこの部屋には霊がいるようだった。それが、サインのようなものを、色々なタイミングの中で送ってくる。引っ越しをしても、僕は床のきしむ音が明らかにひどいということに、あえて聞こうとすることもなくすでに気づかされていた。時々、車があればと、思った。でも多くの人には必要のないであろう乗り物であろう、車が。ベンチに座って、鳥の声を聞いていることがある。でも、それが聞こえなかった日も、何をしているのだろうと、時々、ぼんやりと僕は思う。想像することだけが人の存在を他の動物とは異なる方向に導いたのだが。
海で拾った貝のような美しさを思い出すのだ。そこに行こうとはでも、思うこともなく。僕は眠りについてだけの思いが正しいのだ。そこに行くのだろうと、今日も、頭の中で思う。