北に向かつて歩く一日 (旧作)
石村




長い雨があがつて

まるい空には素敵なパレツト(ひたむきな青)

傘を一本ぶら下げて、僕は旅人になつた。

やはらかな叢に踵をぬらし

見果てぬ夢は遠く投げられ

北極星に向かつて尽きない抛物線を

傘を振りふり僕はなぞる。

さやうなら草雲雀

僕は急いでゐるんだ。

とぼけた自転の圏内を

ひと足早く脱け出して

君が睡つてゐるかるい朝

僕がめざすのはそれだ。

虹色の風にくちづけするのは! たまらない……

あまくいたづらなセンチメンタル

宝石を覆しても午後は虚ろに翳り

秋の陽射しのすゞやかなみそぎ



      (一九九一年十月十三日)




自由詩 北に向かつて歩く一日 (旧作) Copyright 石村 2023-10-14 22:22:50
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