めざめ
soft_machine
めざめ
なにか黒っぽい
いくえにも重ねた
すき間だらけのガーゼ的なにかに
ゆっくりと眠りは
溶かされ絡まりながら
そろそろ吐きだされそう
視界の芯がぼやけ
暗っぽかったのかも知れない
すると黒でなく
すべり落ちそうな
渦だろうか
はっきり回転しないものから
光にはりつけられる
不安定な目ざめ
*
目が覚めてしまえば
わたしはやはり私である
コーヒーを沸かし
乱暴に歯をみがく
バターが溶けるのを待つあいだ
消えてゆく星をながめ
ほんとうに消えてゆくのは
透明たちの限界
テーブルの端にトーストを積みあげ
背すじを伸ばし
いっぷくつける
そういえばあの人は繭に生まれ変るのだっけ
そろそろ蝶になるだろうか
それとも冬は
もっと硬いだろうか
*
栞をはさむ
服を着こむ
そこに無意識がはいりこむ
空から切り離された雑踏は
ばらばらになりかけたまぼろしだろうか
翼の音より
アスファルトに摩擦する
それが果たして目ざめだろうか