Weak Coffee
リリー

 
 コーヒーは言うのです

 女は専門店の浅煎り豆を使ってドリップした
 ブラックを好み 今朝も
 辛子色のアメリカンダイナー風マグカップに
 注がれる一杯

 キッチンで女のまわりに
 よく眠れたの?
 気分はどう?
 香り高く囁いても
 微笑みもしない

 北の砂丘の夕暮
 海に迫った山肌の薄い雪を見て
 波のたわむれ
 風のたわむれに
 唯 一とき心から笑ったけれど

 街に戻った途端
 とりすまして化粧しようと
 冬よりも寂しい顔になり

 消えた夢など
 春風の 落としものだったのだ
 だから
 一緒に朝のワルツを踏もうよ
 と誘っても 可愛げもなく

 冬よりも厳しい顔だと
 コーヒーは その思い吹きすぎかねて
 ためらいながら言うのです

 「夢が消えた女というものは扱い難い…。」
 
 
 
 


自由詩 Weak Coffee Copyright リリー 2023-10-11 12:10:01
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