よるのぜんまい
そらの珊瑚

もうひとつの夜の街が動き出す
灯火はみな偽蛍
背筋を伸ばした猫は
糸を池に垂らしてザリガニを釣り
夢遊病者たちは公園に集い
おとがいを比べ合う
看板描きの落としていった
無邪気な絵筆は
家々の窓に顔を描いていくのですが
透明の絵の具では
笑っているのか
泣いているのか
分からない

昼のあなたを知らなくとも
月光が照らせば
あなたの影は濃く
寄り添えば二人分ことさらに濃く
生きています

散る羽のようにゆっくりと
よるはぜんまいを巻き戻す



自由詩 よるのぜんまい Copyright そらの珊瑚 2023-10-10 13:01:40
notebook Home 戻る