朝顔
たもつ



ほつれていく声
せめてもの手向けに
ひと、手を振る
朽ちた荷を載せて
船は港を離れていく
その先には何も無い
淀みのない坂道の途中で
あなたはそのように
教えてくれたけれど
保育園のお庭に朝顔が咲いたと
わたしは今年も
言いそびれてしまった
せめて正しい手順の
食事を作りたく思い
記憶と思い出を
取り違えることもあった
生きることは
曖昧な輪郭しかないから
どこかの窓から見ていたのは
いつも外の景色だった
あなたは優しい声をたてて
ひとつ食べた





(初出 R5.10.4 日本WEB詩人会)



自由詩 朝顔 Copyright たもつ 2023-10-05 07:02:48
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