いつしか百年がたち
凍湖(とおこ)

いま生きながら埋葬されている
あなた
血の滲んだ手で墓掘りのスコップを握ってる
それもあなた

あなたのお葬式は
だれも知らないうちに行われる
正しい名が呼ばれることもなく
墓標もない

そうさせたのは
あなたの上のやわらかい土を
無知ゆえにほほえんで散歩するようなひとたち
無邪気でやさしいたくさんの足がかたく踏みしめてゆく下に
あなた

いつしか百年がたち
青々と草が繁っても
土の下にあなたがいる
だれひとり覚えてなくても
いて
生きている

息ができなくても
ぱっちりと目を見開いて
すべてを見ている

雨雲が過ぎ去り
水が匂い立つ
そこにあなたの吐いた息がまじる

わたしは悼む
あなたと同じようにスコップを握りながら
埋められながら
土の下を泳いでいく

そして見つける
ほかのだれでもないあなたを
大勢のあなたをどんどん見つけて
手を取りあいわたしたちの根を張る
静かになによりも強く
星を覆うくらい


自由詩 いつしか百年がたち Copyright 凍湖(とおこ) 2023-09-23 20:59:39
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