風の日の夜
リリー

 
 風の夜が来た

 しめ忘れたガラス戸から
 一枚の枯葉を伴って
 大胆に忍び込んで来た
 啜り泣きかけている女に
 熱く くちづけようと
 風の夜が来た

 思い切り 声をあげて泣く事を知らず
 声を殺して胸を押さえる女の
 重たい 悲しみ
 風の夜よ
 お前にそれが解ろう筈もない

 天の下の無情でもない
 それは 掌につつみこむ
 ブドー酒の色

 吹きすさばれている躯中の
 鳴り響くものを全て
 流し去って
 愛を深く沈めたい

 風の夜が来た
 青ざめて
 乾いて
 掌につつみこむグラスの中の慕情の色

 


自由詩 風の日の夜 Copyright リリー 2023-09-21 19:36:05
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