灰神楽に売胡座
アラガイs


煙の中で呼吸する人々は光を求めて彷徨い歩き
常に携帯の鳴り響く音が耳の穴で聞こえてくる
それは風が運んでくるざわめきだと知る術もない
いま、お悔やみのメールが届いたね
地球の裏側で暖をとる人々の指先は冷たくて
太股で眺める人々の懐中は暖かい
火箸が見つからないので竹串でかき混ぜる
植木鉢の代わりに水を差せば赤い花が咲いた
お経の時間はやはり暑くて、戦闘機は爆音を響かせるのだろうか
人々は涼しい顔をして不倫相手の到着を待っている
微かに開いた窓から漏れるようなうめき声は聞こえ
微妙な角度からお経の響きと混じり合う
再び縁遠に過るわたしの中で勃起が始まった
久しぶりに味わう不能者の喜び
現実には正座して待たなければならない苦痛
一日で灰になる街もあれば、膝を曲げて過ごす一日は長い
二階の窓からコードを吊り下げて掃除機を持ち出している
明かりは自然に任す他はないので玄関先を掃いている
温もりも冷たさも、今では手足を離れて
あの日飾られた長い一日を柿食えば
煩悩の鐘は短くも終わる





自由詩 灰神楽に売胡座 Copyright アラガイs 2023-09-20 20:49:08
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