降りて来るまで待てない
室町

いや
あなたが降りてくるまで
待つことは
それほど 
苦ではないのです、わたしは
それどころか
いつも
たいてい忘れています
一年でも大丈夫
ときどき思い出して
いつ降りてくるか楽しみに
しています
でも一年を過ぎると
ちょっと寂しいかもしれない

あなたに
ほんの少しモンダイがあるとすれば
ときところを選ばないことです
電灯のひもを伝っておりてきたり
水洗トイレのレバーをひねったときに現れたり
ふと、足もとに目を落としたとき
目が合うこともある
なぜか
あまりドラマチックでないときに
あなたは降りてくる
そう
あなたはいつも何でもないところに
姿をあらわす
だから好きなんですけどね

ぼくはあなたを拾って
ノートにその姿を書く
ダストのような気配だけなのに
忘れないうちにと
目をテンにして
その輪郭だけでもと書く
でも、けふ
とうとう堪忍袋のおが切れて
待ちきれずに
手グセで
書いてしまった

思った通りあまりよくない作文
作文は書きたくない
どれほど面白くてもあなたではない
どれほどお世辞をいわれても
あまり愉快ではない
やっぱり待つことにするよ
あなたが降りてくるまで
いや
やっぱり待てないかな



自由詩 降りて来るまで待てない Copyright 室町 2023-09-20 08:55:20
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