無への祈り
凍湖(とおこ)

日が暮れてひとりの棲み家に戻る
靴を脱ぎ
1Kのアパートのなか
フローリングに膝をつき
頭を垂れる

声もなく
神すら必要としない
祈り

どうかあしたも日が昇ってください
いやずっと夜のままでいてください
すべてのひとよ、わたしを忘れてください
いえずっとずっと覚えていてください

冷えた血が沸騰するのでまんじりともできず
ただ無限に膨らむ憶いで破裂するまえに
我を忘れようと努力する

昼間にまで祈りをなめらかに引き延ばすので
アルコールに固く封をする

いつか
わたしを物質と非物質に切り離す
銀色のメスを待っている


自由詩 無への祈り Copyright 凍湖(とおこ) 2023-09-15 12:02:42
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