鉢植え
たもつ



植物の中で夜が育つ
水の名前を呼べば
脈打つ石造りの平原
素の風が間もなく
インク瓶の縁に沿って
眠りにつく
木造の旧家屋その皮膚に
愛していた人
鉢植えだけが増えて
遺伝だよ、が口癖だった
柔らかいチーズを並べると
そこは突き当りとなり
オルガンの背中のように
深夜がやってくる
震える暗闇の中手を探す
いつもと同じ所に
過不足なく置かれている
もう朝を待つことしか
残されていない悲しみと
天井を見つめる目
それでもやはり
待ち遠しいのだ





(初出 R5.9.6 日本WEB詩人会)


自由詩 鉢植え Copyright たもつ 2023-09-07 07:01:05
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