飽和
あらい

目の荒いブラシの又を
 喝采と縫い留め
  ひうひうと捨てる
   レシートをかき集める

     解いた髪はまだ濡れていたので
     震えながら あるきまわる

  さらりとしつつ
  無造作の低い巷が
  いくつかおぞましい

            つめて ひくめて

          にぶいいおとがする

            かざりたてた盥ごと

目につく前にさよならを言おうとキイロを持ち出し
抜け落ちた排水口に おしろいは流れたしだいです

      いつもの分かれ道をすぎ、
    抑揚のない川沿いを散歩する
        あの子犬たちの姿を
   今日は見かけない、親子といい
      一昨日から降り続いた雨が忍び込んだ
   耳元ごと振り向いて抱き寄せる
     まるく小ぶりになったころ

またひとりの僕を殺してしまったらしい
やたら だれかのための夕餉のかおりが、

        間延びしたの ひときわ かれる


自由詩 飽和 Copyright あらい 2023-08-18 13:34:09
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