野ばらの記憶
リリー


  熱砂 と
  真空

  ごう音と
  死の静寂

  閃光 と
  奈落


 重々しい
 数十万の足音が
 はてもなく続いて行く

 銃をかつぎ
 一すじの乱れもなく
 声もなく 唇はかたくとざされ
 光もなく 瞳は一点によせられ

  一度 消えたと思ったのだが

 又 幻の様に
 その行進の列は
 地から生まれて
 蒼空へ と
 一すじに続いて行く

 さまよう 魂は
 新月の闇に
 かえるべき宿を見失う


 野ばら よ
 お前の情熱にも
 きっと
 この無言の重みは堪え切れないのだろう
 



自由詩 野ばらの記憶 Copyright リリー 2023-08-09 12:07:47
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