水をおもう
soft_machine

 水が 欲しい
 もう 雨が聞こえる

 水を思うと
 ことばの膜は かわきはじめて

 そのまま 波の奥
 さみしさが鰓をおさえつけ
 こころ、と消えて
 択ぶように石をつかんだ
 あなたの その柔らかさが
 択んだつもりで
 水に 択ばれていたように
 没み そっと 息をふさぐたび
 耳は しづかな泡をうむ

 水が欲しい
 砂のすき間をつめ
 人のかたちに凹ませるのは
 あなただから
 投げこむ度に
 湿っぽく響く

 そんな記憶を 石はつつみながら
 するつと消え
 水面に傷を ひっかかれ
 しん、と
 没み 削れ
 (ほんとうは 消えてなど
  ・・・、
  ほの昏い 声して)

 ふさいだつもりだった
 なのに ふさげなかった
 わたしも 半分
 あなたのなかにあったと気づく
 のこす半分は
 たぶん 真空

 水が 欲しくなるのは
 いつか あなたが 海だった記憶

 もう ふくらみが見える


 


自由詩 水をおもう Copyright soft_machine 2023-08-08 17:10:30
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