ダンサーの夜
朧月夜

わたしはポールダンサー。
性の餌食になりがちな、
場末のストリップ劇場のダンサー。

わたしの踊りは、評判は良くない。
「もっと脱げ」などという、
罵詈雑言にさらされるのも幾度。

でも、わたしはポールダンサー。
糊口をしのぐには、これしかない。
悲しい? 悲しい。

あといつまでこれを続けられ彩られている?
こんなわたしを待つのは誰?
いいえ、誰もわたしを待っていない。

わたしは男たちに体を売る。
でも、セックスはしないのよ?
男たちはわたしを惹きつけようと……

アメリカなら、ポールダンスは芸術。
日本のそれとは比べ物にもならない、
実力がすべての世界。

わたしは甘えている?
そうかもしれない。
糊口をしのぐ。それだけの手段。

でも、普段には地味な格好をしている。
誰も、わたしが風俗業の世界の人間だと、
容易には悟られない。

だが、いつかそれを見破られ、
そこから恋が始まり、
ポールダンスを止めることも考えている。

いや、それはわたしの妄想だ。
いつかは、場末の温泉旅館などで、
老いた肢体を晒すのだろう。

幸福はどこへ行った?
たぶん、捨ててしまったのだろう。
プライドなど、とうに捨ててしまった。

わたしを最後に抱き留めるのは、
臨終に際して体を抱えた女将おかみ
「あんたはなんで若くして亡くなったの?」

わたしはしがない場末のポールダンサー。
いつでも輝いている。いつまで輝いている。
そうでなくちゃ……わたしはわたしじゃない。


自由詩 ダンサーの夜 Copyright 朧月夜 2023-08-01 06:33:39
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