雑踏
リリー

 
 だれも居ない大学の構内に
 緑だけが 大空を指しておいしげる
 私はそれを見るのが好きだった

 雑踏の中に居る時には
 親しく心に顔をみせるのに
 一人になって 悲しい思いの時
 貴方は その息づかいを示さなかった

 いつか それに慣れっこになって
 雑踏の中では心楽しく
 一人で居る時は恐ろしい思いにさいなまれるのを
 当たり前と思うようになった

 暮れ方の空気が
 乱れるのを恐れる様に
 緑 ふきあげる
 大学の敷地内の幾種類もの樹々
 
 そこに空は 
 みえないけれど
 ほんのすきまが、
 何と明るい

 私は明るい娘だと言われるようになった
 
 


自由詩 雑踏 Copyright リリー 2023-07-25 10:17:08
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