遠い夏
リリー

 祇園の石段の上から
 灯の街を眺めさせたいと
 私の腕をむりやりつかんで
 つれて来た あなた

 遠い異国の昔
 王宮の血汐がはねあがった日
 革命の巴里祭
 そして日本では祇園祭りの近い日

 きれいだ
 おはやしがきこえるね
 と、その次
 好きだ 大好き

 屋上ビヤガーデンのちょうちんも
 ほこの上に飾ったちょうちんも
 ほんの少しの風を嬉しそうに受け入れている
 なのに
 あなたの声は
 私の耳からどこかへ消えた

 石段の上は いやしに夜が濃くて
 ぼんぼりの光の輪がびくびくとしている
 


自由詩 遠い夏 Copyright リリー 2023-07-07 10:54:43
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