蜻蛉
soft_machine

曲げた躰をハートの形に触れ合わせ
あおく短い空を翅ごとに掴む
 (静かに震えながら)
何を見ている
何を感じた
 (水と血が滲じむと)

小川に沿って気流が乱れ
深い茂みが盛り上がる度に
見え隠れするふたつの黒い裸管
交錯する大気の濃淡で
半身をきみの指につつまれ
私も地上から切りとられ
秘密に掘り起される
日光が分解する
つまりわたしも
わたしの子ども達を
 (同日がくり返す)
複眼で星を熾し
単眼で水を掬ぶ
何かそれらしく漠然と定義し舞いながら
 (門にぶつかる渦ごと)
次の瞬間
噛み砕き
始めからやり直し

ことばの飛翔はいっときの夢
あとは無残なおとぎ話
接続の烈さは
上下する気分に併せて
空の衝撃が目の前に繰り広げられていて
わたしは客観という概念に我を忘れ
ただ呻っていた
 (よく分らない畏れについて)
それは一匹の昆虫ではあるが
同時に重力と磁場で組まれた
六千万年前の空をゆっくり移る極であり
巨大な紫であり
太陽の化石であった





自由詩 蜻蛉 Copyright soft_machine 2023-07-04 15:46:23
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