ある日
soft_machine

 空っぽのランドセルに
 かなしみをカタコト鳴らしながら
 工事現場は夕暮れの渦につつまれる
 瞳が裂けた子をひとり
 ひかりの膜にとり戻す
 想像上の友だちは
 会いたい気持ちを反故にされた
 足もとでピリリピ
 散らばるものもまた
 折れ釘を認めながら
 謝れなくたって
 いいやと思った
 みじかい夏への脱出口があるなら
 踏み抜いた痛みや
 焼け落ちたような
 窪みの残れ
 かつての
 住人達の
 終わりに際して
 満足いく科白を
 思いつけないや
 あくびに忙しく
 川面に浮かぶ鳥の寝顔などが
 ふうわう
 空に遊ぶ
 ふり蒔かれた金剛粉
 枯枝を掴んだままゆれ残る
 狐猿の中指
 焚き火がつめたい
 バッハもつまらない
 みずいろ
 そらいろ
 こぼれる感情
 かわいてゆく重量
 ちがう泣いてなんかない
 これは自分が駄目になるんじゃなくて
 自分を
 駄目にするって
 したくなくてもそうなる日
 けどね
 笑い方だけは別にある
 菓子パンひとつ
 握り潰して





自由詩 ある日 Copyright soft_machine 2023-07-04 06:23:27
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