引っ越し
短角牛

一人でふたり分の荷物を整理する

なんて過酷で残酷な(笑)

やり始めるとやっぱり記憶に飲み込まれそうで

それでも時々、楽しくて


壁のシールを剥がせば そこだけ白くて

この輪郭も絵になるなぁなんてセンチになって

お揃いの食器も、もうひとりぶんでいい

物に罪はないから 私の分は使い続けるよ

なぜだかそんなに嫌じゃないの


荷物が運び出され 新居に運ばれていく

逆方向に、不用品を積んだ方のトラックが去っていく

待って、全部いるものなの

でも 一人じゃそれは言えなくて


空っぽの部屋で 思い出が走り回る

空っぽだから その余地があるから 

ここで生きていたのだと、拝み倒されそう

それでもいいのに


ありがとう 何に?

ここにはない、全てのものに

私 夢を見れた 私にも 夢が見れた

それが 思い出せたから


暑さの後に雨が降って また晴れて暑くなって

湧き上がる水蒸気は爽やか

役所で手続きを終え 隣の店で冷コーヒー 

カランと鳴る氷 涼しき結露

思いが溢れたら こうやって。


自由詩 引っ越し Copyright 短角牛 2023-06-29 16:31:11
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