夕空のまちで[まち角10]
リリー

 雨 あがり
 ぬれたアスファルトの路面に見る
 ミモザ色の浮草
 それは
 スクールスカートに
 ランドセルを背負っていない女の子の長靴

 手には二つ折りの画用紙持って
 踏切渡った「ときめき坂」で
 下るとも佇むとも決めかねている足運び

 前方へ注がれる視線は人波およぎ

 側にいる私に気付いた女の子が不思議そうな表情で
 見上げたので さり気なく前へ進み出て
 歩をはやめると

 「ぬり絵、出来たの!」
 私と
 今し方すれ違った、女性へ投げられた
 女の子の声に振り向いた

 抱っこ紐の乳児と
 片手に買い物袋をさげる彼女
 乱れ髪を低い位置で束ねた眼鏡の横顔が
 画用紙ひろげる女の子の頭を撫でて話しかける

 笑う 女の子の唇まろく
 この時
 小さな長靴のミモザ色が道端でたわやかに咲いて


自由詩 夕空のまちで[まち角10] Copyright リリー 2023-06-25 08:25:16
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