夕空のまちで[まち角10]
リリー
雨 あがり
ぬれたアスファルトの路面に見る
ミモザ色の浮草
それは
スクールスカートに
ランドセルを背負っていない女の子の長靴
手には二つ折りの画用紙持って
踏切渡った「ときめき坂」で
下るとも佇むとも決めかねている足運び
前方へ注がれる視線は人波およぎ
側にいる私に気付いた女の子が不思議そうな表情で
見上げたので さり気なく前へ進み出て
歩をはやめると
「ぬり絵、出来たの!」
私と
今し方すれ違った、女性へ投げられた
女の子の声に振り向いた
抱っこ紐の乳児と
片手に買い物袋をさげる彼女
乱れ髪を低い位置で束ねた眼鏡の横顔が
画用紙ひろげる女の子の頭を撫でて話しかける
笑う 女の子の唇まろく
この時
小さな長靴のミモザ色が道端でたわやかに咲いて