夜想63
ひだかたけし

廃墟から
見える現実、
偽りの世界

  *

渦巻く宇宙の岸辺から離れ
静かさの森奥深く歩み入り

この白い小部屋にて

網戸にしたまま
カーテン開き
夜を迎える

灼熱の火山、爆発する前に
雨降り続け、街道は水浸し

刻まれる時
ただ前へ前へ
恐怖に襲われ
目覚める子供
普段は天真爛漫
だったのにね

  *

僕ら 廃墟抱え生きている
偽りの現 感覚快楽に酔い
束の間 満たされ生き延び

真夜中に剥き出す無機、
地平昇る巨大な母の顔、

(そしてその巨大な母、
巨大なフライパンで
あなたという存在炒め焼き尽くす)

あなたは自殺を遂げ
私は何故か生き残り

渦巻く宇宙の岸辺から離れ
静かさの森奥深く歩み入り

見えないもの意味なきものの響き

ひたすら聴き入りながら、

残余の生 賭けて













自由詩 夜想63 Copyright ひだかたけし 2023-06-22 21:05:40
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