紫陽花ヶ丘
嘉野千尋



  暖かな雨に追われて迷い込み君と出会った六月の町


  徒に花びら数え占った恋の行方を君も知らない


  花は花やがて綻び散るものの定めの前に花鋏有り


  裏庭でかろき音立て茎絶ちぬ五月雨の下花を抱く君


  紫陽花は日差しのなかで朽ち果てる何も語らず何も誇らず


  擦れ違うその一瞬に気が付いた赤い雨傘あれは君のだ


  身を寄せて咲くのは花と君は言う二人の距離を傘が隔てた


  時計台「雨が朝から続くから」言い訳をした来ない君に


  雨に濡れ花も若葉も色を増す青褪めたのは君の横顔


  七色に姿を変えたこの花を君に贈るよ別れの意味で


  雨音に沈みゆくのは懐かしの君のふるさと紫陽花ヶ丘







短歌 紫陽花ヶ丘 Copyright 嘉野千尋 2005-05-12 19:04:39
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