夏の場面
たもつ



子供たちが整列をしていた
何をしているのだろう、とよく見ると
整列をしていた
身体の隅々にまでしみわたる雲のように
なだらかで滑らかだった
透明な水を植物にあげて
話すことなどもう残っていないのに
スクリーンには音声がないままの
汗ばんだ映画が映しだされる
先ほどの子供たちはすでに
映画の中に出演していて、よく見ると
整列をしていた
鶴を折るのが下手なので
練習すべきかどうか迷っているうちに
数年が過ぎた
その間に子供たちは
整列するのに必要な肩幅を
少しずつふわりとさせていった
昨日始まった夏が
明日には終わってしまうかもしれない
一番端っこに並び
隣の子からもらった折り紙で
また一から鶴を折り始める
台があれば良かったのに
映画はいつまでも
夏の場面を往復している



自由詩 夏の場面 Copyright たもつ 2023-06-16 19:18:17
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