阿吽の呼吸
リリー


 その日は夕方までに出張先を二箇所回る予定だった
 庁舎の駐車場を出発した公用車のバン
 
 走る 湖岸道路から
 雪化粧した比叡の山陵が見えて
 ハンドル握る主幹へ助手席の私はたずねる

 どうしますか?
 そうやな。
 わたし、アソコがいいかなぁ。
 アソコか。
 午後の予定時間に余裕みて、ちゃちゃっと済ませた方がいいでしょう?
 そうやな。寒いし、そうしようか。
 はい。体、あったまるでしょ。

 後部座席に一人居る主任が声を掛けてきた

 なんなん、この二人!夫婦の会話やん。「アソコ」しか分からへんやん。

 私は振り返り 
 呆れ顔する彼女へ笑顔を投げた

 「お昼、丸亀製麺でいいですかっ?」

 
 
 



自由詩 阿吽の呼吸 Copyright リリー 2023-06-15 06:48:04
notebook Home 戻る