夏塊つち
蕎麦屋の娘



それは凄くて 彼の胸は貝がらだ
完璧な夏に 投棄された貝がらだ
涸れないことをほめるのは
ただ軽蔑するのと一緒だ

彼は薬匙やくさじを咥えさせて
蛇も寝なさそうな夢を明かす あまりに
音として未熟でいながら とめどもないから聞いていた
聞いていなかったが

つかれて
旧皮質のとけはじめた彼は
夜しまう円卓の骨のようにひろがる

卑しめえぬ暗がりに陶然と
風鈴に曲げられた肖像がある
少年の手に仕えるような真珠がある


自由詩 夏塊つち Copyright 蕎麦屋の娘 2023-06-12 05:10:47
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