殺し。譲渡の病弱
狩心

今朝、弱い人間を殺し
私は生まれ変わった
過去から続く同一性が嫌でならないからだ
頭で考える過去現在未来ではなく
魂の呼び声 本当に「今」というポイントに集中する
なぜなら、頭で考える過去現在未来の思考法による創造は全て虚像であり、
メタファーであり、遺伝子組み換えであり、ジャンケンポンでしかないから
本当に純粋な創造は 頭で考えない今にしかないのだ
頭の中で考えるのではなく、大気や呼吸や血流に含まれている声のようなものに
耳を傾けるのだ、耳を傾けるというのは比喩であり、
実際に耳を傾けるわけではない、何か漠然と感じ取るのだ
そうやって表現を少しずつずらしていき、ゲシュタルト崩壊でも起こせばいい

今朝、私は
「弱い人間を殺し 私は生まれ変わった」という人物を殺し
目的格を排除した そもそもそういった単純志向が罠なのだ
全ての事物は想像を超えて把握できないほど複雑怪奇なのだ
迷宮の出口を探そうとする事が良い事だというのが罠だ
迷宮全体を感じ取りながら、溶け込み、心を落ち着かせるのだ
そこでいい、そこでいいという事を本当に悟らなければならない

今朝、「『私』が分からないという私」という人物を殺し
主格を排除した 主格と目的格がない状態で私は
文章という形態から少しずつ脱皮し、
死と隣り合わせの詩という形態へ
少しずつ近づいて行った
階段を下りていく
外を覗き込むとここが3階であるという事が分かる
3階分下りれば地上に着くはずであるのだが、
一向に着かない
再度外を覗き込むと風景は変わっていて
ここがさっきとは違う場所だという事は分かる
つまりループしているわけではないという事は分かる
上を見上げると、階段から顔を出して上を見上げている人が
1階層毎に1人ずつ、まるで無限に続くかのように
天高くまで続いている
私が上を向くのを止めて下を向いたら皆下を向くのだろうか
私は下を向いて手鏡で後ろ、つまり上の人達の顔を確認した
私とは別の人物達だった
そして鏡を持っているのは私だけだった
私はこの鏡を失ったら、きっと辛い思いをして、後悔するだろうと分かっていたが
握っていた手を放し、鏡を地上に落とした
鏡は地上にぶつかって割れて、幾つかの破片になって散らばった
そこに 自分は知らない子供達が数人駆け寄ってきて
破片を拾って どこか遠くへ駆けていった
私はその子らの姿を目で追いかけた
その子らはどんどんと小さくなっていき、見えなくなって消えた
これから永遠に降りかかるであろう不安や恐怖よりも、
なぜかこの一瞬の出来事が、私を何よりも安らかな気持ちにさせた

今朝、皮膚の下に沢山の鏡の破片を埋め込んである
血だらけの少年と少女とも言えないような
人間とも獣ともゴーストとも言えないような
得体の知れない動物が走っていた
走っている場所は地面とも地中とも空中とも言えないような場所で
言うなれば、水の上のような柔らかで流れのある虹の橋のような場所だった
橋だと言っても、何かを渡す為のものではなく、
弧を描いているから虹の橋のようだと表現したまでで
弧を描いているからと言って、円形でもない
言うなればそれは回転する刃物で、沢山のチに溢れていた

今朝、












自由詩 殺し。譲渡の病弱 Copyright 狩心 2023-06-09 13:11:10
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