カメラ
soft_machine

 シャッターを落とす
 あのざっくりとした硬さ
 断ち切り目に
 憧れた子ども

 これっきり然とした震撼も
 つかの間フイルムを失うと
 空間に倣う
 一度きりのはずの人生で
 くり返す手続きに狎れ

 私は信じたのだろうか
 かつての幼さが見せた
 人が持つらしい
 無限の夢を
 思い出せただろうか
 きみもかつて
 一心にファインダーを覗きこみ
 視点を確かめたあの日
 飛ぶ鳥を追いかけながら
 きみは鳥の
 思いそのものを見ていた
 花を捉え
 花に過ぎる
 時の豊かさに触れ

 (弾むボールの行く末に来る)

 (おおぐちをあけた暗闇)

 記憶のかけらに指をはわせ
 風もその旗の向こうにまく
 三度の息を
 深く吸って
 大きく吐いて
 シャッターを落とす





自由詩 カメラ Copyright soft_machine 2023-06-03 15:03:28
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