神飾り
ミナト 螢

ピアスの穴が2つある
どちらも好きなバンドが出来た時
何か印になるものが欲しくて開けたのだ

好きなものが出来ると
生き方が前向きになるし
傷口に塗り込むマキロンは
僕にとって夏の匂いだった

ライブに行く前日に開けた穴が
生々しく赤くなり
Tシャツを脱ごうとすると
耳たぶが擦れて痛かった

希望しか見えない瞳で
鏡に映るピアスを
確かめて笑う日々だった

安っぽいピアスの輝きを
疑うことも知らずにいたけど
東京で働くようになって
本物に触れることが増えた

それでも
失敗した安物のピアスは
机の引き出しにしまって
大人になったんだ

どんなピアスを
付けるかも大切だけど
何もしない日に
光や音が
ピアスの穴を通る気がして
髪の毛を耳にかけたりする


自由詩 神飾り Copyright ミナト 螢 2023-06-02 19:54:25
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