カレーライス
本田憲嵩

ゆうやけ、こやけ、
鍋の底がすこし焦げた、
スプーンですくった、黄いろいルーの、
ぐつぐつと美味しそうに、ガスコンロの火で煮込まれてゆく、
それは、
ようやくふたりで完成させた、
さいごの、料理 となった、
俎板のうえには包丁、ゴロゴロとした、
角ばったにんじんに、ジャガイモ、それにまだ刻まれていない、玉ねぎ、
プライパンで炒めた油のにおい、
ほそい蛇ぐちから水道水は、母のようにかぼそくせせらぎ、
時の川のながれをさかのぼってゆく、
近くの公園からは、子どもたちのまだ遊んでいる声、
ゆうやけ、こやけ、
しらない家の台所から、夕飯の支度のにおいがする、



自由詩 カレーライス Copyright 本田憲嵩 2023-05-07 23:46:05
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