山咲カエルの子
アラガイs


ツバメたちは寄り添うまま不順な季節に耐え忍び
ああ、もろもろに春の気配ですね
これは地上からの山嵐か砂嵐かわかりません
わからないけれど、人の温もりが消えたままに
思いのほか歳月は残酷に通り過ぎました
桟橋に停泊するフェリーが離れていきます
陽当たりに誘われて登った離島の電波塔
         そろそろと蛇が気になり枝を持つ
見下ろしては摘み取る一面の蕨よ

おたまじゃくしが孵る頃にはツバメも巣を離れ
ああ、畦道から鳴き声が聞こえる
沈丁花の雌蕊が毒なのか解毒なのかわからない
わからないけれど、多くの人が生き死に絶えたまま
再会を果たそうにも目印がありません
電柱の下には満杯の電池ボックスが
それはあなたが散歩する度犬の縄張りになる
           薄壁に貼られたヌードのポスター
帰りたい四十六文字の純粋な水よ









自由詩 山咲カエルの子 Copyright アラガイs 2023-05-04 18:16:39
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