石について
リリー

 気持ちの不安で落ち込んだり
 あるいは高揚感に落ち着きの無くなってしまう時
 深呼吸する
 そして私はシングルポイントの六角柱水晶を握る

 掌の柔らかい部分に三辺の角が当たり心地良く
 皮膚から浸透して感覚的に伝わってくるものがある
 気持ちへ不快感をもたらす対象は
 この水晶柱へ吸い込まれ
 氷の檻の中に 封印される

 例えれば ほら、
 まだ 空中に舞う美しくもない一匹の蛾 
 の様なものに変容するのだ
 その羽の鱗粉は
 うっかり触れたりすると かゆみや
 かぶれを引き起こす毒があるので
 興味を持ってはいけない
 賢者は それを知っている

 この水晶柱はかつて
 職場で心身共にストレスから体を壊した私が
 療養中だった時、
 叔母がくれたプレゼント

 巌にも咲く すみれがあり
 風の度に鳴りながら
 芦は いつか高く生い茂る
 この石を握ると、そんな想いの巡るときもある



自由詩 石について Copyright リリー 2023-05-03 18:34:55
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