電子音床
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背後では 電子音

老人たちを怯ませる
幾重もの窓を
切りまく高層
河口を遡る ひかりの山

子どもの私も
山を透り身を
長く横たえ堤になれた
両腕に抱えきれる
幅しかない細流を
山に還す、誰にも壊させない
夏は震えた
鐘の音に諦め
影の膨らみに諦め
次の日も去る日も
気づく、まるで知らない人みたいに
冷たい水が見る先に

遠ざかる 電子音

指を割りいる管を沈む 心よさに
愚か者たちのためらいと発振
波の表裏が
いつか砕け散る
巨大な赤子の まるい瞳に
いよいよ風が打ちつける
白圧の中心で
眠る恋人たち
これからも 死が
数えきれぬほど過ぎるだろう
病床の不安に倣う
機器も列べ強く振動しなくては

最後に何か描くべきだろうか
最後だから、夢が
麻酔の効いた指で待つ傘に
晴れ渡ってはいるが
嵐でもある





自由詩 電子音床 Copyright soft_machine 2023-04-25 18:23:10
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